19回 睡眠環境シンポジウム
ー 第12回日本睡眠環境学界大会 ー

平成15年10月23 〜24日 於)名古屋ガーデンパレス


10月23日

研究発表1 小型実験装置による二種類の固綿の弾力性に関する実験研究

     佐藤 忠  横浜国立大学 大学院 工学研究院
日本睡眠環境研究所 川島義美勝

研究発表2 生活習慣病における寝具の考察
堀田勝彦 堀田毛織株式会社

研究発表3  敷ふとん素材の違いが睡眠に与える影響

橋本修佐 武蔵野大学 
西川産業 ザ・ウールマークカンパニー

研究発表4 人体を使った寝具内温度湿度の測定方法の検討

鈴木公輔 公大株式会社
カメックス、中島メリヤス、織元、足利工業大学

研究発表5 敷寝具の使用感に関する心理評価
         ー重回帰分析を使ったアプローチー
萬代 宰 足利工業大学
ヤカタ、カメックス、公大、中島メリヤス

研究発表6 寝姿勢の実測方法と体圧分布・寝姿勢を自由に変えられる敷布団
川島美勝 日本睡眠環境研究所
アキレス、トーア紡マテリアル

研究発表7 インターネットによる枕コンサルティングの現況報告   「枕の悩み110」
加藤勝也 KMコンサルティングオフィス

講演1 セドロール(ヒマラヤ杉)の鎮静作用による睡眠改善効果の解析

 矢田幸博 花王(株)

日本睡眠環境学会総会

講演2 生活環境への緑茶機能の展開
井上眞一 愛知工業大学

研究発表8 夏期および冬期睡眠時の人体生理・心理応答と寝具における熱・水分移動と蓄積
     その1、夏期および冬期睡眠実験 
石黒晃子 関西電力  京都大学 近畿大学
研究発表8 夏期および冬期睡眠時の人体生理・心理応答と寝具における熱・水分移動と蓄積
     その2、夏期睡眠実験の解析
河本奈都子 京都大学   関西電力  近畿大学

講演3、 熱帯人の暑熱対応
松本孝朗 愛知医科大学  

研究発表10 現代の子供たちの睡眠実態と疲労・ストレス
有倉祥子 富山大学
研究発表11 睡眠間環境改善第三の鍵
        安眠空間創造への一考察 21世紀蚊帳の中の人間像
三島治 安眠コム菊屋 
研究発表12 睡眠環境と生活習慣(5)
         生活様相の違いによる疲労感と起床感 
西澤英幸 日本体育大学
講演4  睡眠中の交感神経活動とその変化
岩瀬 敏  名古屋大学

研究発表13 睡眠時無呼吸症に対する寝具による体位変換の効果 
橋爪祐二 久留米大学 西川産業

研究発表14 睡眠実験室環境下における夜間睡眠中の心拍数の変動
福田秀樹 産業医学総合研究所  東京都精神医学総合研究所

研究発表15 日常生活における睡眠の評価システムの開発
         AC−300を用いた心拍数・身体活動・姿勢を指標として
岡 龍雄  産業医学総合研究所
研究発表16  体圧測定位の温度変化と体圧測定値の検討
梶井宏修 近畿大学 ロマンス小杉  大阪青山短期大学

研究発表17  クーラー使用時の寝室温熱環境が睡眠に与える影響について
久保博子 奈良女子大学 東芝キャリア

研究発表18  無拘束睡眠深さ判定方法の開発と実験結果
小林敏孝 足利工業大学  奈良女子大学  シービーシステム開発

講演5  低温環境での睡眠と冬眠の生理学
 橋本眞明  旭川医科大学

研究発表19  加圧子による体圧測定の一検討
荒川一成  足利工業大学 

研究発表20  睡眠環境と生活習慣(6)
         アクチグラムを用いたスポーツライフマネージメント応用への試み
井川正治 日本体育大学
研究発表21 高地低酸素環境における夜間睡眠
松本孝朗 愛知医科大学 信州大学 実験動物中央研究所
研究発表21 炭酸泉浴の温熱生理学的効果
西村直記 愛知医科大学 金城学院大学

10月24日

大会長講演 寝具寝装品業界の課題と睡眠環境センターの概要
川島美勝 睡眠環境学会会長・日本睡眠環境センター
大会長講演 暑さに耐えるメカニズム −暑熱順化とはー
菅屋潤壷 愛知医科大学

パネル討論 「夏に快適な寝具と寝室」
        環境工学の立場から    梶井宏修 近畿大学
        温熱生理学の立場から   菅屋潤壷 愛知医科大学
        睡眠時の体温調節、寝具の性能から  川島美勝 睡眠環境学会
        夏に快適な寝具  吉兼令晴(大阪西川) 中川雅彦(ロマンス小杉) 
                     犬山義昭(ヤカタ)
        快適な睡眠のための冷房   菅原作雄

テーマ講演  健康づくりと睡眠 
講演6   健康づくりと睡眠 
 内山真 国立精神・神経センター

講演7   よりよい睡眠のための入浴・温泉浴 
 阿岸祐幸   北海道大学

講演8   入浴による一過性の身体加温がその後の睡眠に与える影響
           入浴の睡眠環境改善効果の検証
小林敏孝 足利工業大学 
講演9    ふとんの性能と快適な睡眠
古田土賢一  日本睡眠環境研究所

講演10   眠りと汗
小林徳雄  愛知医科大学

講演11   危険な眠気  「睡眠時無呼吸症候群」
塩見 利明  愛知医科大学



研究発表11 テーマ 睡眠環境改善の第三の道 安眠空間創造について
 21世紀蚊帳の中の人間像

発表内容
1)はじめに
(2)結果の概要
(3)購入者の特長
(4)蚊帳商品の特徴
(5)不安解消型商品群



睡眠環境の改善 3つの鍵(Key)



睡眠環境改善 第一の鍵 物理的環境
◆点→面(寝床)→空間に至る
 物理的な睡眠環境の改善
睡眠環境改善 第二の鍵 身・健康な体
身体の状況、健康状況・身体的環境
 食事と運動を基本とした身体つくり 眠りに就く身体の栄養状況
睡眠環境改善 第三の鍵 心・心の健康 問題提示
◆共生・共眠 地球と共に眠る ← 心的環境改善




 2003年10月23日  於)名古屋パレスホテル  研究発表11  三島 治

         テーマ  睡眠間環境改善第三の鍵   安眠空間創造への一考察 

21世紀 蚊帳(かや) の中の 人間像

1. はじめに 

一度死滅したかのように思われた蚊帳がよみがえった。それは、なぜだろうか?

店頭の現場ではめったに蚊帳は売れないのに、インターネットでは飛ぶように売れる。なるほど蚊帳は英語で言うとモスキート・ネットだ。ネットであるからインターネットに適した商品で売れたのだろう。と、わけの分かったような、分からないような話をしているとIT活用セミナーなどに呼ばれて、ネットの張り方、ネットの取り扱い方、ネットの中での過し方、ネットの手入れ方法等、インターネットやホームページについての話をするように言われる。

私はそのことをそのまま、蚊帳の張り方、蚊帳の取り扱い方、蚊帳のある暮らし、蚊帳の手入れの仕方、そして知る人ぞ知る蚊帳のたたみ方に置き換えて話すことがよくある。

その時は、ネットの蚊帳の外から、どうぞネットの蚊帳の中へとIT(情報技術)の世界へ人々をお誘いする係としてである。

 私の住んでいるまちで気の合った仲間が集まって「いわたネット」という事業協同組合を設立した。私もそこの設立発起人の一人として副理事長を努めるようになった。

IT(情報技術)の活用で地域経済の活性化に寄与するものとして設立されたのだが、その「いわたネット」が私のところの「蚊帳はどうして売れたか?」をテーマに地元の静岡産業大学経営学部と磐田市が共同調査を実施した。

21世紀の最初の2年間で私のところで蚊帳をご購入いただいた1,700名あまりの方を対象に蚊帳の中の住み心地等のアンケート調査である。以下、静岡産業大学の鈴木正也教授の分析を交えてまとめてみた。

2.結果の概要 

主な結果の特徴を述べると,次のようになる。

・ 購入された蚊帳の種類は和室用の昔ながらの蚊帳が約半分であるが、底面をつけてファスナーで出入りする六面体のムカデ対策の蚊帳の購入が20%を占めていることに、改めて驚かされた。まったくオリジナルの蚊帳を製造して、ムカデの恐怖に対する需要に応えることができたとうれしく思った。また、蚊帳の材質については麻が好まれている。

・ 性別については、男性が女性の約2倍である。これは、購入者に男性が多いことと、インターネット利威容者に男性が多いことの結果であろう。

・ 年代別には,30代、40代が多い(合わせて63%)が、これはインターネット利用者層がこの年代に多いことと、小さな子供を持っている世代のためと考えられる。ついで20代が16%となっている。

・ 未婚者は14%、既婚で子どもがないは15%で、全体で子供ありが約70%である。これは利用者に子供が多いことを示すであろう。

・ 血液型の人口比率は、A型=40% O型=30% B型=20% AB型=10% であるが、アンケート結果は,A型=35% O型=32%と A型が少なく、O型が多く蚊帳を購入している。これは、O型血液が他の血液型の人にも輸血可能なように、蚊にも好まれるため襲われやすいのであろうか?また、O型は虫を殺さずに身を守ると言う平和主義者が多いのか?A型はその逆なのか?ちなみにアメリカの歴代大統領で、調和と平和を願う大統領として評価を受けているアイゼンハワー、フォードの両氏はともにO型、ブッシュ氏はA型であるとか・・・等々、この点については、さらに詳細な調査が必要である。

・ 居住地域に関しては,住宅地が圧倒的に多い農村が意外に少ない。このことからいえることは、蚊帳利用者は,都市居住者に多いということである。

・ 職業は、会社員,公務員合わせて過半数であるのに対して、農水産業従事者が1%と極端に少ない。このことからも,蚊帳利用者は都市型であると見なしてよいであろう。

・ 居住環境としては,一軒家が約70%である。平均的な居住環境を考えると、若い世代においては、アパート・マンションが60%以上であるので、蚊帳利用者には一軒家居住が多いといってよいであろう。

・ 使用階数に1階が圧倒的に多いが、このことは,蚊が比較的高いところには出現しないことによるであろう。

・ 寝室の様子は和室でふとんが圧倒的に多い(約62%).ベッド生活者よりも和室でふとん利用者に蚊帳は好まれて入るのであろう。

・ 約半数近くの人が読書と音楽を趣味としている。

・ ペットは飼っていない人が約64%と約3分の2である。あるアンケート調査の結果と比較すると蚊帳の購入者はペットを飼っていない人の割合が大きい。これは蚊でもペットでも他の動物嫌いの人が蚊帳を愛用するのであろうか。集合住宅に住んでいるため犬などを飼うことができないと言う割合からも、蚊帳購入者は一軒家住まいであることとあわせると、そのように言えるかもしれない。

・ 購入動機としては、蚊対策が圧倒的に多い(約72%)のは当然であろうが、ムカデ対策も意外に多い(約21%)ということである。この数は六面体の蚊帳購入者の数と概ね一致する。次に比較的多いカテゴリーを拾うと次のようになる。殺虫剤嫌い24%、エアコン嫌い10%、環境によい 12%、子供を寝かす9%、安眠追求18%、蚊帳が好き12%である.

・ 使用者を見ると,購入者本人という場合が、約54%と過半数である。それ以外には赤ちゃん・幼児・小学生合わせて33%である。

・ 価格の意見については、高いが36%、高くないが63%である。私のところの蚊帳は品質を重視しているため、市場の平均価格よりも比較的高い。それにもかかわらず、高いと感じている人がそれほど多くはない。さらに追求していくと、高いと答えた人のほとんどが蚊帳の使用感がよいと言っている。これはたいへんうれしい結果であった。

・ 使用感について、良くないがわずかの2%で、蚊帳の印象は非常によいといえるだろう。

3.購入者の特徴

アンケート結果の内容から,注目すべき事柄をピックアップすると,次のようになる.

・ 30代、40代で子供ありの利用者が多い。ついで20代である。

・ 住宅地域がほとんどで、農家は極端に少ない。このことから,蚊帳購入者は都市型である。

・ 一軒家が多い

・ 和室で布団にやすむ人が多い

・ 防虫対策だけでなく、エアコンが嫌いであるとか、安眠のためという動機が多い。

・ 利用者は赤ちゃんから子供が多いが、大人の利用が過半数である。

・ 値段は実際の値段よりも安いと感じている。

・ 使い心地は非常に良く、不満を持っている人(わずか2%)は極端に少ない。

さて,以上から,21世紀の蚊帳の中にどんな人間像が描けるだろうか.

「20から40歳代で、都市に居住し、一軒家を所有しており、エアコンなど人工的な環境よりも自然環境を好み、良い商品なら多少高くても購入する」そんな人間像が描かれる。

さらに、比較的若年層で、一軒家を所有していることから見て、努力家で社会的に成功している人たちだと見ていいだろう。このタイプをさしあたって「都市型余裕若中年層」と呼ぶことにしよう。


4.蚊帳商品の特徴

 このアンケート結果だけでなく、購入動機や感想などのフリーアンサーの分を調べると単に防虫対策だけで購入しているのではなく、またアトピーなど体質的に薬品を受け付けないという理由からではないということが分かる。例えば、エアコンではなく自然の風で涼を取りたい、安眠したい、蚊帳の中で家族が親密になりたい、などという動機が多数見られるのである。これは重要な点である。すなわち、蚊帳の使用目的である防虫対策だけで蚊帳が売れているわけではないのである。確かに、防虫対策だけなら、アースなどの薬品で無色無臭の商品が販売されているので、それを利用したほうがはるかに安く効率的である。したがって、蚊帳商品には使用目的(実質的価値)以外に付加価値がついているのである。それはなにか。

 商品の価値としては,実質的価値と記号的(シンボルとしての)価値による分類がある。例えば、自動車は交通手段(移動目的)としての価値を持つ。しかし、ベンツなどの高級車はただ交通手段の観点から購入されるわけではない。それはステータスシンボルとしての価値を持つのであって、ベンツなどを所有している人たちは金持ちであり、社会的に成功者だと見なされるのである。この場合、自動車の移動としての交通手段は、実質的価値である。これに対して、社会的ステータスとしての価値は、自動車の持つシンボルとしての価値、すなわち記号的価値である。シャネルやヴィトンなどのブランド商品は、ブランドと言う記号的価値がほとんどを占めており、実質的価値はほとんどないといってよい。このように、商品の価値は、実質的価値と記号的価値とに分かれるが、蚊帳の価値はどちらでもない。蚊帳はもちろん第一義的には、防虫対策として購入されるのであるが、それであれば、薬品のほうがはるかに安く効率的である。従って、実質的価値のみで購入するわけではない。では、記号的価値による購入であろうか。そうではないであろう。蚊帳は一体何のシンボルであろうか。蚊帳は昔は利用されていたが、現在ではほとんど死滅した商品なのである。従ってそこにはほとんどイメージがついていないであろう。つまり記号的価値を持ってはいないのである。強いて記号的価値があるとすれば、それは回顧趣味(レトロ)であろう。しかし、回顧趣味で蚊帳を購入しているとは思われない。

 蚊帳商品は、従来の実質的価値――記号的価値の分類軸では説明できない価値を有する。では、いかなる分類軸によって、蚊帳商品は理解されるのであろうか。

5.不安解消型商品群

 そこで、本報告では、別の視点からのアプローチを試み、一つの仮説を提案したい。蚊帳以外に、現在売れ行きの良い商品の中で特徴的なものに、ビタミン剤などの健康サプリメント商品、通販での健康グッズ、無農薬食品などがある。これらに共通する性質は何か。それは健康という問題である。この健康は狭い意味に捉えるべきではなく、心身全体の健康と考えてよい。つまり、身体的な健康だけでなく、精神的な安心も含まれる。このような広い意味の健康商品が売れているのである。これが現代の1つの傾向である。

 現代の日本は、経済的には富める国であり、平和であり、現在不景気であるといっても、大半の人々には差し迫った特定の(具体的な)心配や不満があるわけではない。しかし、農薬の使用により身体が蝕まれているのではないかとか、将来年金がもらえず生活ができないのではないかとか、企業ではリストラされるか分からないとか、漠然とした不安に取り囲まれて生きているのである。このように、日本人の大多数は差し迫った具体的な不満を持ってはいないが、漠然とした長期的な不安を持っていると思われる。特に、健康や日本の(従って自分たちの)将来に不安を感じているのではないであろうか。健康商品が良く売れるというのも、身体に対して漠然とした不安があるからである。特に具体的に、身体に異常が発見されているのでなくても、通販で健康グッズを購入し、ダイエットに励んだりするのもその理由からである。肥満は高血圧の原因だということを聞いて、実際に高血圧でなくともダイエットに励んだり、現代人はカルシウムが不足がちだと聞けば、実際にその自覚症状がなくとも、カルシウム剤を飲むのである。私はそれが間違っていると言いたいのではない。実際に高血圧は肥満によることが多いであろうし、自覚症状がなくとも、カルシウム不足の人は多いであろう。

 しかし、自覚症状もないのに購入するということは、潜在的に不安を持っているからであろう。何の不安もなければ、自覚症状のないところで商品を購入しないであろう。即ち、われわれ現代人は、運動不足により、身体に異常がきたすのではないか、外食が多くて食に偏りがあるのではないか、という漠然とした不安を抱きながら生活しているのである。そして、健康グッズは、不安解消商品なのである。

 このような不安解消商品のフレームを次のように考えよう.

 まず、不安に自覚している場合(顕在型不安)と自覚していない場合(潜在型)を考えよう。次に、不安解消の方法において、自力で行おうとするタイプと他者に依存して行うタイプに分ける。すると、ここに不安について,二つの軸ができる。一つは<不安の自覚――不自覚>の軸であり、他の一つは<不安解消の自力型――他者依存型>の軸である.これらの軸からは四つのタイプに分類されるが,次ページで見るようには実際には三つのタイプが存在することになる。


 まず、不安を自覚していて、それを解消しようとするが、解消の方法は受動的であって、他者に依存しようとするタイプである。つまり,専門家などに言われるままに、比較的盲目的に実行するタイプである。このタイプが実際には最も多いと考えられる。例えば、通信販売で、この健康グッズでエクササイズすれば健康になりますよといわれて購入する場合である。このタイプを他社依存不安解消型と呼ぼう。次は、不安の自覚はないが、人に言われて、解消しようとするタイプである。例えば,単身赴任で生活していて外食が多いとしよう。本人は至極健康である。しかし、外食が多いとビタミンが不足するといわれて、ビタミン剤を購入して飲むタイプがこれである。実際にビタミンは不足しているのかもしれない。今そのことを問題にしているのではない。不安解消のタイプを問題にしているのである。このタイプを誘導不安解消型と呼ぼう。次に、不安を自覚しいて、その解消を自分が努力して行おうとするタイプである。例えば、お腹が出てきたので、ウォーキングやテニスをするとか、コレステロールが多くなったので、ジョギングをするとかするタイプがこれである。このタイプを自力不安解消型と呼ぼう。最後に、不安を自覚しないで、不安を自分の努力によって解消するタイプが組み合わせから存在するが、実際には存在しない。なぜなら、自覚していない不安を自力で解消しようとしないであろうからである。従って実際には三種類の不安解消のタイプが存在することになる。そして、それぞれに対応したタイプの商品が存在する。

――自力不安解消型としての蚊帳商品

 上のようなフレームワークを提示した後で、われわれが仮説として提示しようとするのは「蚊帳は自力不安解消型に合った商品である」ということである。それをこれから説明しよう。

 まず、蚊帳は宣伝されていたわけではないので、不安が誘導されたわけではない。従って、誘導型不安解消型ではない。蚊帳購入者は不安を自覚していたのである。即ち「できればアースなどの薬品を使いたくない」、「薬品を多用することに対する漠然とした不安」を自覚していたのである。そして、彼らは口コミとかあるいはそれに類似した方法で、受身的に蚊帳の存在に行き着いたのではない。それはアンケートのフリーアンサーの項目から読み取れるし、実際口コミなどは存在しなかった。どのようにして、彼らは蚊帳の商品に行き着いたか? ある意味でこれは、われわれにも不思議である。彼らはインターネット上で積極的に探したのである。そのことから、彼らのタイプは、不安自覚型――自力努力型であることが分かる。従って、ここで言う「自力不安解消型」タイプである。



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調査結果と照らし合わせると21世紀の蚊帳の中の人間像としては「20から40歳代で、都市に居住し、一軒家を所有しており、エアコンなど人工的なものよりも自然を好み、良い商品なら多少高くても購入する」が描かれ、一言でまとめると21世紀の蚊帳の中の住人は「都市型余裕若中年層」とも言える。

そして、このようなタイプは努力型であろう。年齢が比較的若く、一軒家を所有しているということがそれを示している。努力して成果を挙げ自分の望む生活を送ろうとするタイプである。そこに「自力不安解消型商品」として蚊帳がミートして、蚊帳そのものも再び陽の目をみるようになったと言えよう。

さらに、ここで忘れてはならない大きな要因としてのIT(情報技術)が加わる。

彼ら「都市型余裕若中年層」はインターネット利用者であると言うことである。このインターネットによって全国に点在していた「都市型余裕若中年層」の需要を集めることによって,市場を形成することができた。

まさに、ネットを通して、蚊帳の中へ入ってきたことになる。従来の情報伝達手段では考えられなかった規模で「類は友を呼ぶ」現象が起こったのである。

おそらく今後「都市型余裕中若年層」が日本に多く生まれていると思われる。彼らは従来とは異なった新しいライフスタイルの持ち主である。彼らは必ずしも、成長や効率を追求しない。むしろ、そこに現れるストレスや不安の解消を重視する。しかも、重要なことはそれを受動的に他者に依存して行おうとするのではなく、あくまで自分の努力によって行おうとする人々である。

このような人々は全国的に点在しているために、従来はグループとして捉えることができなかった。インターネットの普及によって始めて顕在化するにいたったのである。