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           睡眠薬の分類 ベンゾジアゼピン系睡眠薬
○市販薬で不眠を改善するなら、どんな薬を選べばよいか
○「耐性ができる」ことはほとんどない
○福西勇夫先生(ふくにしいさお)

睡眠薬は賢く使えば、安全で効果てきめん!
危険なので飲みたくない、と思う人が多い睡眠薬。
しかし、いまでは安全で効果の高い薬が使われています。
    



睡眠薬というと、残念ながら、マイナスのイメージを抱く人がいまだにいるようです。
かつて、テレビドラマや映画などでは、自殺の方法として
「睡眠薬の大量服用」のシーンが多く登場しました。
ある世代の人たちにとっては、その印象が強く残っていて、
怖い薬との思いがぬぐえないのでしょう。
また、シロウト同士の根拠のない会話のなかで、勝手に危ないものと
決めつけていたりするケースも多々あります。
確かに、かつての睡眠薬の主流だったバルビツール酸系の薬は、
脳の睡眠、覚醒をコントロールする部位に直接働くために、
強い催眠作用があったのですが、その反面、脳のなかの呼吸をつかさどる
脳幹網様体という部位に抑制作用が及んだり、麻酔薬に似た働きをしたりしました。
大量に飲むと、呼吸が停止することもあり、安全性については確かに疑問が
残るものでした。
しかし、この薬がおもに使われたのは、もはや過去のことです。
現在では、安全性の高いベンゾジアゼピン系の睡眠薬が次々に開発され、
医師が不眠症患者に使う処方薬としては、バルビツール酸系の睡眠薬に代わって、
ベンゾジアゼピン系の薬が主流になっています。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、睡眠、覚醒にかかわる部位に直接作用しないので、
その安全性は格段に高くなっています。


不安や緊張をやわらげ眠れるようにする薬

それでは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が効くメカニズムについて、
少しくわしくお話しましょう。

脳のなかには、神経伝達物質と呼ばれるさまざまな情報を伝える物質があります。
アセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、グルタミン酸、
ガンマアミノ酪酸(ギャバ)などがそれです。

ややむずかしくなりますが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、
脳のなかにある神経伝達物質に関連する受容体に働くことによって、
催眠作用を起こすのです。
ベンゾジアゼピン系の薬は、ベンゾジアゼピン受容体とくっつくことにより、
ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどに関係する神経の働きが抑えられ、
その結果、眠りがもたらされるのです。
喜怒哀楽の感情や不安に関係する大脳辺縁系という部位に作用し、
不安や緊張をやわらげ、興奮をおさえることによって、眠れるようになると
いうわけです。自然な眠りに近いという点で安心です。

また最近では、バルビツール酸系睡眠薬でも、ベンゾジアゼピン系睡眠薬でもない、
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が開発されています。
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、ベンゾジアゼピン受容体にくっつくことにより
催眠作用を発揮するもので、ベンゾジアゼピン系睡眠薬ではありませんが、
薬の働き方は近いものです。


薬の持続時間によって四つのタイプに分けられる

さて、薬は飲んだあと体内で吸収され、血液中の濃度が高くなってから、
効き目が現れてきます。
少しずつ肝臓で分解され、腎臓を経由して尿のなかに排泄されて役目を終わります。

体内で効果が持続する時間は、薬の種類によって違ってきます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、その持続時間が四タイプに分けられます。
超短時間型、短時間型、中間型、長時間型とありますので、
不眠のタイプ、その人の状態によって、適したものを使い分けていきます。

●超短時間型……薬の吸収、排泄が素早くなされ、効果はたちまち現れますが、
その持続時間もごく短いものです。睡眠導入剤ともいわれています。
寝つきの悪い「入眠困難」のタイプに使われます。翌日まで効き目が残ることはありません。

●短時間型……効果が現れるまでの時間が比較的短く、持続時間も短いものです。
「入眠困難」「中途覚醒」のタイプの不眠症に用いられます。
年配の人の場合、一般的に薬の持続時間が長引きますので、短時間型の薬でも
「早朝覚醒」に有効です。

●中間型……効果が現れるまでの時間は、超短時間型、短時間型に比べると長く、
持続時間も長いというものです。「早朝覚醒」タイプの不眠に使われます。
中間型の薬は、起きたのちも精神安定作用があるため、眠れなくて不安感の強い人に処方されます。

●長時間型……薬の分解に時間がかかり、かなり長い間効果が持続します。
うつ病の人で、不安感が強くあり、不眠をともなうときに使用されます。
「熟睡感の欠如」タイプの不眠に向いています。


○市販薬で不眠を改善するなら、どんな薬を選べばよいか

医師が患者を診察して、治療のために出す薬を処方薬といい、
これはふつう薬局、薬店では処方箋なしに買うことができません。
これに対し、処方箋なしにだれでも買うことができる薬が市販薬です。
睡眠薬はふつう医師の診察を受けて処方してもらいますが、
市販薬のなかにも不眠を治す薬はあります。
この場合に使われるのは、鎮静剤、催眠鎮静剤などと呼ばれる薬です。
イライラを鎮め、緊張感をやわらげることによって、睡眠に導かれるというものです。
不眠が現れてからまだ日が浅い、比較的軽いと思われる、
わざわざ専門医を訪ねるまでもないというときに、試してみるとよいでしょう。
市販薬は薬の知識のない人が使い、もし誤った使い方をしても、
大きな副作用が起こらないように作られています。
鎮静剤の成分は、市販薬のなかでもさまざまな病気、
症状の薬のなかに含まれているもので、その安全性は確認されています。
しかし、決められた用法、用量は必ず守ってください。


かぜ薬と同じ成分の眠くなる市販薬

それでは、具体的にいくつか市販薬をあげていきましょう。
催眠導入剤として、鎮静剤のブロムワレリル尿素に生薬を配合した
「奥田脳神経薬」(奥田製薬)、鎮静・睡眠導入効果がある
パモ酸ヒドロキシジンを配合した「アタラックス\P錠」(ファイザー製薬)があります。
鎮静剤として、カノコソウ、カギカズラなどの生薬を配合した
「シンテリカS」(アクラス)があります。
かぜ薬などに使われている抗ヒスタミン剤の塩酸ジフェンヒドラミンを主成分とする
「ドリエル」(エスエス製薬)は、発売されて間もない薬ですが、
かぜ薬を飲むと眠くなるのと同様の作用で不眠に効果をあげます。
一時的な不眠なら、こうした市販薬が効果を発揮しますが、
効果が不十分だからといって、飲みすぎたりしてはいけません。
そんな場合は、ただちに服用を中止し、専門医に相談してください。


○「耐性ができる」ことはほとんどない

睡眠薬が使われるかどうかは、もちろん医師の判断によりますが、
実際処方されて飲みはじめると、
「だんだん効かなくなってくるのではないか」「
薬がないと眠れなくなってしまうのではないか」と不安になる人も少なくありません。
薬の分量を増やさないと効果が現れなくなることを、
「耐性ができる」と表現しますが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、
医師の指示どおりに飲めば、耐性ができることはほとんどありません。
いったん飲みだしたら、一生続けなければならないわけでもありません。
睡眠薬の作用で睡眠が正常にとれている間に、ストレスをうまく処理する方法を
見つけ、それ以外の睡眠環境を整備していき、薬を飲まなくても
眠れるようにすることが、専門医による治療なのです。

ここで、一人の不眠症患者の症例を紹介しましょう。

主婦のA子さんは四十七歳です。少し神経質ぎみで、蒲団のなかに入っても、
昼間起こったいやなことが次々に頭に浮かんでしまい、
いつまでも眠れないと訴えて、精神科を受診しました。
「入眠困難」のタイプでした。はじめのうちは、睡眠薬の服用に拒否反応を
示していました。やはり偏見があったのです。
近所の人から、「睡眠薬を飲むと頭がおかしくなる」といった無責任な話を
聞かされていたためでした。
睡眠薬に関する誤解を解き、安全性を強調して飲むことを納得してもらいました。
超短時間型のベンゾジアゼピン系の薬を処方すると、
たちまちぐっすり眠れるようになり、元気になりました。


長時間型の睡眠薬は翌日に眠気が残る

現在医師が使うベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に、
危険な副作用はありませんが、といって、まったく副作用がないわけではありません。
睡眠薬を上手に使うためには、副作用についての認識を正しくもっておく必要が
あります。そこで、おもな副作用について説明しましょう。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬でも、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬でも、
長時間型のものを使うと、翌日に眠気が残ることがあります。

年齢の高い人は、睡眠薬の効果が持続する傾向がみられますので、
翌日まで残りますし、体の小さい人、体重の軽い人は、睡眠薬が効きすぎることが
あるのです。該当する人は、医師とよく相談する必要があるでしょう。

長時間型の睡眠薬は、効果の持続時間がとても長いため、
目覚めてからも「持ち越し効果」が出てしまうのです。
持ち越し効果は、朝、頭がぼんやりとしたり、体の動きが鈍くなったり、
というかたちで現れます。脱力感があり、ふらついてきたりしますので、
年配の人の場合は、転倒してケガをしないよう、注意する必要があります。
副作用の頻度としてそれほど高くありませんが、物忘れすることがまれにあります。
これは効き目の短い超短時間型、短時間型の睡眠薬を飲んだときに現れるものです。
たとえば睡眠薬を服用したあとで、軽く夜食をとり、食べたことを忘れてしまう、
というかたちで症状が現れます。
これは長時間型の睡眠薬の持ち越し効果とは異なります。
短時間型の薬は、催眠効果はすぐに出てきますが、作用は長くても三〜四時間で
なくなります。短時間型の薬を飲み、効き目が強く出ているときに、
なんらかの刺激を受けたとしても、脳は眠ったままですから覚えていないということに
なります。


薬を止めると起こるリバウンドには?

睡眠薬に対する習慣性は、一般の人が一番気になる副作用かもしれません。
この習慣性には、身体依存と精神依存の二種類があります。
身体依存は睡眠薬をずっと長く服用していて、いきなり飲むのを止めると、
禁断症状が出て眠れなくなるというものです。
「反跳性不眠」と呼ばれ、薬を止めたことによるリバウンドによる不眠現象といえます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の超短時間型、短時間型のものに起こりやすい傾向があります。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のなかには、このリバウンドが少ないものがあります。
精神依存とは、睡眠薬を飲んで眠るのが習慣になっていて、精神的に頼ってしまう
ことです。長短時間型や短時間型の薬の場合、寝入りばなの効果があるために、
精神的に頼ってしまう人が多くなるのです。
身体依存も精神依存も、主治医の指示にしたがって対応してください。


アルコールと睡眠薬はいっしょに飲まない

次に、睡眠薬を使う際の注意点をあげておきましょう。
まず、アルコール飲料といっしょに睡眠薬を飲んではいけません。
お酒を飲んだあとに睡眠薬を服用すると、両方の催眠作用が出ることになります。
翌朝の眠気やだるさが残ったり、行動が鈍くなったり、
また物忘れなどの副作用が現れたりしますので、注意してください。
アルコール飲料についていえば、寝酒にわずかの量を飲む程度なら楽しみのうち
ですが、寝る前に大量に飲むとまったく眠れなくなることがあります。
アルコールは催眠作用もある反面、不眠のもとともなる「両刃の剣」というわけです。
睡眠薬を使用している場合、お酒を飲むと効果の判定に支障をきたすことになります。
医師の正しい治療の妨げともなりますので、控えなければなりません。


夜中に目覚めて睡眠薬を飲むのは止めよう

次に、寝るときの20分から30分前に飲むのが原則です。
毎日だいたい同じ時間に寝床につくなら、飲む時間も固定できます。
睡眠薬は眠るための薬ですから、飲んでしまったら、あとはもう寝るだけという
体勢に入ることです。

夜勤などの仕事をしている場合、仮眠をとるために睡眠薬を使うことは避けてください。
薬の作用が効いているときに行動すると、その行動を覚えていないことになって、
トラブルのもとともなりかねません。
睡眠は眠気が現れたときに、そのタイミングにうまくのることが大切です。
ノンレム睡眠とレム睡眠の一サイクルは90分おきにやってきます。
つまり、眠気は90分ごとに訪れるのですから、いったんチャンスを逃すと、
次の眠気まで、また90分待たなければなりません。
眠気が起こったときこそ、眠りに入ることができる絶好のタイミングなのです。
中途覚醒で夜中に目覚めてしまったとき、その時点で睡眠薬を飲むのはやめましょう。
効果が翌日に持ち越されて、眠気やふらつきなどが起こることになります。
睡眠薬を飲むのは、あくまで夜寝る前のタイミングと覚えておきましょう。
不眠以外の治療のために、別の薬を飲んでいるときは、
医師にその旨を正確に伝えてください。複数の薬の飲み合わせは、副作用が出て
危険です。

睡眠薬の止め方は、飲んでいる薬のタイプによって異なりますが、
超短時間型、短時間型の薬の場合は毎日少しずつ量を減らしていきます。
中・長時間型は週に一回、二回と飲まない夜を増やしていきます。
自己判断ではなく、医師の指導のもとに行うことが原則です。


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