| 寝息をたてて十分に眠っていても、眠った感覚がもてない不眠症もある |
眠りには、いろいろなレベルがあります。
寝入りばなは、ノンレム睡眠という脳の休息をとる睡眠に入り、
これは四つの段階に分かれます。
ノンレム睡眠は浅い眠りから、徐々に深い眠りに移行し、
つづいてレム睡眠という体の休息をとる短い睡眠に入ります。
レム睡眠とは、眠っているときに左右の眼球が急速な動きを示すことから
名づけられたもの(レムとはラピッド・アイ・ムーブメントの頭文字)ですが、
レム睡眠のとき人間は夢をみています。
ノンレム睡眠とレム睡眠を合わせると、一サイクル約90分となりますが、
人間の眠りは一晩にこのサイクルを四、五回繰り返します。
不眠症のなかでも、「熟眠感の欠如」にあたる人は、
実際には眠っているにもかかわらず、眠っていないと訴えるわけですが、
ノンレム睡眠の浅い段階を繰り返していたとすると、
うとうとしているだけで眠った感じがしない、眠った感覚を強くもてない、
ということになるのです。
ノンレム睡眠の浅い段階では、本人に眠っている自覚がないこともあります。
眠っていないという人の家族に様子を聞いてみると、
本人は寝息をたてて十分によく眠っている場合があります。
眠っているのに眠った感覚がないというのは、本人の主観の問題です。
このとき、睡眠薬による治療を行わないほうがよいこともあります。
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眠ろうと力んでしまいよけい眠れなくなる
眠っているのに眠れないと訴える人は、つらさの表現が大げさになりがちです。
「昼間の仕事にまったく集中できない」
「頭がボーッとして、へんになりそうだ」
命にかかわるのではないか」
自分にとっては深刻かもしれませんが、本人は昼間テレビをつけながら、
うたた寝をしていたりします。また、なんとかして眠ろうと、力んでしまうために、
よけい眠れなくなることもあるようです。
先に持続性の精神生理性不眠は、神経質性不眠であると説明しましたが、
性格的に几帳面で些細なことでも気にする人は、眠れなかったつらさ、
苦しさにこだわり、なんとかして眠ろうとあせります。
このような蓄積がストレスになることは、すでにおわかりになるはずです。
ストレスが交感神経(自律神経の一種)を緊張させ、ますます睡眠を
妨げることにもなるのです。
眠ることにこだわりを捨てるべきでしょう。
テレビを見ているときには、眠れないことへのつらさは忘れているはずです。
だからこそ、テレビをつけながら、いつの間にかうとうとしてしまうのです。
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一ヶ月以上不眠状態が続くときは治療が必要
眠れない状態が、どの程度持続するかによって分ける不眠の分類もあります。
「一過性不眠」とは、旅行に出て枕が変わったことで眠れなくなった、
試験前で緊張して眠れないなど、特別な出来事、事情のために生じる
数日間だけの不眠です。
一時的なストレス、緊張などによって不眠が起こるわけですから、
原因がはっきりしています。その原因が除かれ、また日常に戻れば不眠は治ります。
ふだんはよく眠れているのですから、一過性不眠に関しては、
なにも気にする必要はありません。
一週間から三週間程度続く不眠を「短期不眠」といいます。
これは家庭や仕事でトラブルが起こったり、ストレスが長く続いたり、
重い病気にかかったりしたときに起こります。原因が解決すれば自然に治ります。
一ヶ月以上不眠状態が続く場合、「長期不眠」と呼ばれます。
これは本格的な不眠(持続性精神生理性不眠症)で、いろいろな原因があるにせよ、
治療が必要となります。
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突然耐えがたく眠くなるナルコレプシー
眠りの障害には、眠れなくて困る不眠症のほかに、眠りすぎて困る「過眠症」があります。
過眠症には、特発性過眠症、ナルコレプシーなどがあります。
特発性過眠症は、日中に突然眠気におそわれ、それが長い時間に
及ぶというものです。
眠気の程度は、耐えがたいほどではありません。中途覚醒などの不眠が、
同時に現れることがあります。
日中に突然眠気におそわれるという点では、ナルコレプシーも同様です。
特発性過眠症に比べると、ナルコレプシーの眠気は10分から20分程度の短い
ものですが、強烈な、耐えがたいものであることが特徴です。
日に何度も強烈な眠気が起こり、眠気のあとは、爽快感が訪れます。
ナルコレプシーはまた、情動脱力発作がいっしょに起こります。
情動脱力発作とは、笑ったり、うれしがったりするときに、全身の筋肉の緊張が
弛緩するものです。
ナルコレプシーは睡眠のリズムが異常化し、24時間のなかで睡眠と覚醒が
何度も繰り返す状態と考えられます。
睡眠中のノンレム睡眠とレム睡眠のリズムも乱れています。
ふつう、睡眠に入るとまずノンレム睡眠の状態となるのですが、
ナルコレプシーの場合、レム睡眠がいきなり現れるのです。
レム睡眠は体の休息ですから、筋肉の緊張は低下しています。
情動脱力発作が起こるのも、これで理解できます。
ふつうなら、眠ってしまうことなど考えられない状況、たとえば会議中、試験中、
運転中、会話の最中に突然眠りだすのですから、社会生活に支障をきたすことに
なります。
ナルコレプシーは薬物治療が可能ですから、専門医に相談するとよいでしょう。
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| 「体内時計」が睡眠のタイミングをつかみかねる「概日リズム睡眠障害」 |
わたしたちの体に刻まれているのは、約25時間周期のリズムであることが
わかっています。
体は、じつは地球の二十四時間のリズムに合わせているのです。
これを概日リズムといい、約一時間のズレは、日光や社会生活の刺激などによって
調整されています。
昼間活動し、夜一定の時間になると眠くなるのも、この概日リズムの働きに
よりますが、ときに体内のリズムと外界のリズムとが合わなくなることがあります。
「体内時計」が睡眠のタイミングをつかみかねて、本来眠る時間帯の前後に、
眠気が起こってしまうのです。
このことを、「概日リズム睡眠障害」といっています。
なぜ睡眠の時間帯がずれるかというと、社会生活の変化によって、
わたしたちは本来寝る時間に起きていたり、またその逆をしたりするからです。
わかりやすくいうと、外国に行ったときの時差ボケがあります。
たとえば成田を出発したときが朝で、半日たって現地に着いたときもまた朝なら、
体は眠くなるはずなのに外界が明るいために眠れず、調子が狂わされます。
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若い人は体のリズムが遅いほうにズレやすい
近年は大人だけでなく、多くの子どもも夜型の生活にどっぷりとつかっています。
夜遅くまでずっとテレビを見ている、ファミコンを夜通しやり続けている、
あるいは、インターネット中毒になっている若い層、小学生もいるくらいです。
同じ夜更かしでは、一晩中刺激を求めて繁華街をうろつく未成年が後を絶たず、
社会問題化しています。
ともあれ、夜寝ないで「活動」しているのですから、昼間居眠りするのは
当然のなりゆきです。
会社で重要な会議中に居眠りするサラリーマンや、教室で授業中に
居眠りする子どもが増えているのは、こうした生活時間のズレが
原因になっています。
概日リズムに関係するこの現象は、「睡眠相後退症候群」と呼ばれます。
毎日の夜更かし生活によって睡眠時間帯が遅いほうにズレてしまい、
早朝まで眠れず、
その後昼まで眠ってしまうというものです。
若い人は体のリズムが遅いほうにズレやすいといえるでしょう。
概日リズムが正常に働くためには、朝目覚めたときに日光を浴び、朝食を食べ、
学校、会社に出かけるといったきっかけが必要になります。
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朝たっぷり日光浴をすればよい
その反対に、「睡眠相前進症候群」というのもあります。
これは睡眠時間が早いほうにずれ、夕方には早くも眠くなって寝てしまい、
夜中に起きるというものです。
年をとると朝の目覚めが早くなるのは、睡眠時間が短くなる一種の老化現象ですが、
「睡眠相前進症候群」も年齢に関係していると考えられます。
概日リズム睡眠障害は、体内に備わっている調節機能
(脳の視床下部である「視交叉上核」がコントロールしています)の狂いによって
起こりますが、これを正常に戻すには日光を浴びることが一番なのです。
光は目から視神経を通り、「視交叉上核」に届きます。
そのことによって、睡眠・覚醒のリズムは本来の昼夜のリズムに適応するのです。
睡眠の時間帯にズレを感じたら、朝たっぷり日光浴をすることをおすすめします。
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| 恐い「睡眠時無呼吸症候群」は大きないびきが特徴 |
まさか、睡眠中に自分の呼吸が止まっているとは
夢にも思わないでしょう。
この病気はいびきでわかります。
肥満者や首の短い人に多いのですが、
甘くみると大変なことになります。
睡眠中に呼吸が止まってしまうというと、びっくりする人がいるかもしれませんが、
「睡眠時無呼吸症候群」は10秒から90秒の間、窒息状態になる病気です。
呼吸の際の空気の通り道、鼻腔(鼻のなかの空間)、口、咽頭、喉頭などを
上気道といいますが、この上気道がふさがってしまったり、
あるいは低呼吸といって、呼吸が弱くなったりするのです。
上気道がなぜふさがるかというと、肥満、首が短いこと、下顎が小さいこと、
扁桃腺肥大などが原因となっています。
太っている人は、上気道が狭くなっているうえ、睡眠中に筋肉の緊張が
なくなるために、上気道が完全にふさがれてしまうのです。
あお向けで寝ていると、太っていなくても舌根、上あごの軟口蓋がのどの奥のほうに
沈み、上気道は狭くなっています。
呼吸の停止は睡眠中に起こるため、本人はまさか眠っているときに
呼吸をしていないなどと夢にも思いません。指摘されても、本気にしない人が
多いのです。
再び呼吸するときに大きないびきをかくのが特徴で、
いっしょに寝ている配偶者、家族によって気づかれます。
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日中眠気におそわれ生活に支障をきたす
睡眠時無呼吸症候群は、一晩に数十秒の呼吸停止、呼吸再開を30回以上、
あるいは1時間に5回以上の無呼吸が起こる状態をいいます。
この病気になると、睡眠が不安定なものとなり、ノンレム睡眠のうち、
深い睡眠相が少なくなるために、日中眠気におそわれるのが特徴です。
あお向けで寝ると上気道がふさがりやすいですから、ときどき横向きになったり、
うつ伏せになったりすれば、閉塞は防げます。
すべての人に治療が必要であるわけではありませんが、
昼間の生活に支障をきたしたり、高血圧などの合併症が引き起こされたりしますので、
注意が必要です。
治療法には、扁桃腺の切除や、下顎を前に出すマウスピースの装着などがあります
(治療法については後述)。
日本人は肥満しやすい欧米人に比べて、睡眠時無呼吸症候群になる率が低いと
思われていましたが、近年、日本人にもこの病気が多いことがわかってきました。
現在、この病気に該当する人は約200万人いると推定されています。
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| いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係 |
正常な睡眠
睡眠時の正常な呼吸では、舌が気道側に落ちこむことなく、
空気の通り道がきちんと確保されている。これなら、ほとんどいびきはかかない。
無呼吸睡眠
舌が気道側に落ちこんだり、肥満によって気道が狭められると、
空気の通り道がほとんどふさがれる。
気道が狭いと、空気が通るとき粘膜が振動していびきを発生する。
気道が完全にふさがれると無呼吸状態になる。
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